【手順を解説】保育士として働くために必要な「保育士登録」とは?手続き方法まとめ

2024.05.30 | 資格・試験
保育士養成校を卒業、または保育士資格試験に合格して保育士資格を取得するだけでは、保育士として働くことができません。保育士として働くためには、保育士登録が必要です。
本記事では、保育士として働くために必要な「保育士登録」に関して、登録の手順から更新や変更について詳しく解説します。

保育士として働くために必要な「保育士登録」とは?

「保育士登録」とはどのようなものなのか、法律の改正等の背景を交えて解説します。


■保育士登録とは

「保育士登録」とは、保育士資格を取得した時、都道府県知事に対して登録申請手続きを行い、保育士証の交付を受けることです。

保育士養成校を卒業、または保育士試験を受験して保育士資格を取得しただけでは、保育士として働くことはできません。卒業証書や資格証明書だけでは就労できず、保育士証の交付を受けて初めて保育士として働くことができます。

保育士登録を行っていない場合、正式な保育士としては認められず、保育士として働くことはおろか、保育士と名乗ることも法律で禁じられています。


■保育士登録が必要となった背景

2003年以前は、保育士(保母)資格証明書があれば、保育士として働くことができました。しかし、2003年児童福祉法が改正され、「保育士」は民間資格から国家資格になりました。

保育士は、名称独占資格と定められています。

名称独占の国家資格とは、国が定める要件を満たした資格保持者だという証明がなければ、その職業に就くことはできない、名乗ることもできない国家資格の職業です。

保育士の場合、国の認可を受けた保育士養成校で必要な単位を取得し卒業するか、要件を満たし保育士試験に合格することでその資格を得ることができます。その資格保持者だという証明を都道府県知事に登録するのが「保育士登録」です。

保育士登録が必要となったのは、法の改正により保育士の定義が大きく変わったことが背景にあります。厚生労働省発表によりますと、以下のように改正前と比べるとより専門性を求められています。


・保育士の定義

改正前

(児童福祉法 施行令第13条第1項)

改正後

(児童福祉法 第18条の4)

児童福祉施設において、児童の保育に従事する者を保育士といい、次の各号のいずれかに該当する者をもってこれに充てる。

厚生労働大臣の指定する保育士を養成する学校その他の施設を卒業した者

保育士試験に合格した者

この法律で、保育士とは、第18条の18第1項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう

引用:保育士の定義 | 保育士登録の制度と登録事務処理センター | 保育士の登録 - 登録事務処理センター (nippo.or.jp)


このように保育士は、子どもや子育てに関する専門の知識を有した専門職であり、保育業務と共に、保護者への指導も重要な役割をもっていると定められました。このように、質を担保して信頼性を保つためにも、保育士である証明が必要です。

このような背景から、保育士登録が必須になりました。


■保育士になるにはいつまでに保育士登録が必要?

いつまでに登録すれば良いかというと、保育士証が必要になる前までに登録します。

保育士の登録の手続きは、卒業後〇年以内など決められた有効期限はありません。資格取得後いつでも申請できます。また、毎月申請を行っているため、今年度の申請締め切りは〇月〇日までということもありません。そのため、好きなタイミングで申請できます。

ただし、保育士登録は登録申請から交付まで、早くて約2ヶ月かかる見込みです。そのため、できるだけ早めに申請に向けて動き出すことをおすすめします。

保育士として働きたい場合は就職する前に、もしくは転職活動中に保育士証を交付してもらいましょう。

なお、保育士養成校在学中の学生の場合、学校ごとに取りまとめて申請している場合があります。既定の単位を取得し卒業できる見込みが確定すると、指定の用紙が配布され、申し込みをします。不明点は所属する養成校の事務局に問い合わせてみましょう。

この場合、発行が卒業以降になることが多いです。しかし、無事に卒業できていれば就職先には後から提出しても大丈夫な場合もありますので、就職先にも確認しましょう。


■登録される内容と登録先

具体的にどのような内容がどこへ登録されるのか把握しておきましょう。


登録される内容

保育士登録簿に登録される内容は以下の通りです。


・氏名

・生年月日

・本籍地都道府県名(外国籍の場合は国籍名)

・登録番号

・登録年月日

・資格要件(「指定保育士養成施設卒業・卒業(修了)年月」または「保育士試験全科目合格、合格年月」のいずれか)


登録先

保育士の登録先は、以下の通りです。


・指定保育士養成施設を卒業した方 → 申請書提出時点で、住民票住所地のある都道府県知事

・保育士試験に全科目合格した方 → 保育士試験合格地の都道府県知事


引用:保育士の登録と罰則規定 | 登録事務処理センターの役割 | 保育士の定義 | 保育士登録の制度と登録事務処理センター | 保育士の登録 - 登録事務処理センター (nippo.or.jp)


無事に登録されると、登録した都道府県だけでなく、全国で保育士として働くことができます。

■保育士証と保育士資格証明書の違い

あらためて、保育士証と保育士(保母)資格証明書との違いについて理解しておきましょう。


保育士証:都道府県知事に保育士登録を申請して、手続きが完了し交付される、保育士登録を証明するもの

保育士資格証明書:保育士または保母の資格をもつことを証明するもの


保育士(保母)資格証明書は、2003年11月に法が改正されるまでは、保育士資格取得者に交付されていました。保育士証を発行する時に重要な書類の1つです。

法が改正されて以降は、指定保育士養成施設卒業証明書または保育士養成課程修了証明書、保育士試験合格通知書が同等の証明書です。

つまり、保育士資格証明書や卒業証明書は、それだけでは保育士として働くこと、名乗ることはできませんが、保育士登録に必要な書類です。

保育士登録の流れ

保育士登録の流れをおさえておきましょう。


■「保育士登録の手引き」の取り寄せ

まずは、申請書や記入例などがセットで入っている「保育士登録の手引き」を取り寄せましょう。取り寄せの手順は以下の通りです。


STEP1:必要なものを用意する

1.返信用封筒1枚、角形2号(A4用紙が折らずに入れられるサイズ)

角形2号より大きいと料金不足になるので、このサイズを用意します。


2.返信用封筒に貼る切手:請求部数に応じた郵便料金

切手の金額は、取り寄せる部数によって変わります。



郵便料金

請求部数

(登録者1名につき1部)

基本料金

(角形2号封筒)

速達料金

(速達での返送をご希望の場合)

1部

140円

基本料金に260円加える

2〜3部

250円

4〜6部

390円

基本料金に350円加える


3.返信用封筒を送るための送信用封筒:1枚

返信用封筒が入る封筒であれば指定はありません。返信用封筒は折りたたんで入れても大丈夫です。


4.送信用封筒に貼る切手:必要金額分

重さに応じた切手を貼ります。郵便局での計測をおすすめします。


STEP2:郵送する

用意したものを郵送します。


1宛先の記入、切手の貼り付け

送信用封筒の表に、宛先:「〒102-0083 東京都千代田区麹町1-6-2 登録事務処理センター」御中と記入後、必要金額分の切手を貼ります。

 

2.送信用封筒と返信用封筒の左側(切手の下)に、赤字で「保育士登録の手引き○部」と請求内容を明記します。

 

3.返信用封筒の表(宛名欄)に自身の住所、郵便番号、氏名を記入し、請求部数に応じた郵便料金の切手を貼ります。

 

4.切手を貼った返信用封筒を、送信用封筒に入れて封をします。

 

5.郵便ポストまたは郵便窓口から郵送します。

(宅配便会社などでのメール便でのお取り扱いはできません。)


■登録料の振り込み

登録事務処理センターから「保育士登録の手引き」が郵送されてきたら、次は登録料を支払います。

まずは、「保育士登録の手引き」をしっかり読みましょう。

「保育士登録の手引き」に同封されている専用の払込用紙を使用し、登録人数分の手数料として、登録1人当たり4,200円を振り込みます。

ATMでの手続きを促されることもありますが、必ず窓口で振り込みます。

振り込みをしたら「振替払込請求書兼受領証」と「振替払込受付証明書」を忘れずに受け取ります。その際、郵便局と日付が入った受付印が押されているかを確認します。


■書類の準備と郵送

書類を準備して郵送します。

申請に必要な書類は以下の3つです。


1.保育士登録申請書

「保育士登録の手引き」に同封されています。記入例をしっかり確認し、必要事項を記入します。


2.振替払込受付証明書

「保育士登録の手引き」に同封されている払込用紙で登録料を支払った際に受け取った用紙で、一番右端の部分に当たります。これを1の保育士登録申請書の裏面に全面のり付けします。


3.保育士となる資格を証明する書類の原本

次のA~Eのうち、いずれか1つの書類を用意します。

A 保育士(保母)資格証明書

B 指定保育士養成施設卒業証明書
※卒業証書、通常の卒業証明書とは別の書類です。

C 保育士養成課程修了証明書
※指定保育士養成施設を卒業後、科目等履修により保育士養成課程を修了した場合

D 保育士試験合格通知書
保育士試験合格者に送付される通知書です。
※「保育士試験結果」は必ず切り離してください。そのまま添付しても返還されません。

E 2005年度までに交付された以下の書類のうち、連続した3年間で全科目合格していることが確認できるもの。

・保育士試験一部科目合格証明書(2003年度まで交付)
・保育士試験一部科目合格通知書(2004年度より交付)


現在の戸籍抄本(戸籍の個人事項証明書)

婚姻などにより、現在の氏名が保育士となる資格を証明する書類に記載されている氏名と異なっている場合に、証明するものとして必要な書類です。それ以外は不要です。


申請書類をそろえたら、封筒に入れて封をし、登録事務処理センターに送付します。必ず郵便局の窓口で、簡易書留郵便として送りましょう。

郵便局窓口で発行される「書留郵便物受領書」は、大切に保管します。万が一郵便事故があった場合、必要になります。


■保育士証の受け取り

保育士証は、申請先の都道府県による審査を通過し、保育士登録簿へ登録された後、交付されます。

登録事務処理センターから簡易書留郵便で郵送されます。不備や特別な確認事項がなくても、最短でおおよそ2ヶ月程度かかります。

登録内容の変更が必要なケース

登録内容の変更が必要なケースについて解説します。


ケース1:引っ越しなど住所変更をする

引っ越しなどで住民票に変更があるだけであれば変更の手続きはありません。本籍地を変更する場合には変更の手続きを行います。


ケース2:結婚などの理由で姓が変わる

結婚などで姓が変わる場合は、書き換え交付申請手続きが必要です。

「書き換え手引き」の送付を申請して、手引きに沿って申し込みます。1人1,600円の手数料がかかります。

申請書類には、変更後の戸籍抄本(戸籍の個人事項証明書)が必要です。詳しくは書き換え手引きに説明されています。

なお、保育士証の提出も求められますので、大切に保管しておきましょう。

また、結婚に関する書き換えでは、保育士証に旧姓と新姓を並べて記載することも可能です。その場合には別途書類が必要です。

保育士登録に関するよくある疑問点

保育士登録に関してよくある疑問点を回答します。


■登録をしないとどうなる?

保育士登録をしないと、保育士として働くことができないほか、保育士と名乗ることができません。

しかし、保育士資格が無効となるわけではないので、そこは安心して良いでしょう。

保育士養成校に入学しなおす、または保育士試験を受けなおす必要はありません。卒業してから10年以上保育士として働いていない方でも、再度働きたい意思があれば、申請することで登録できます。


■更新は必要?

保育士資格や保育士登録は更新制ではないため、更新の必要はありません。

有効期限はなく、一度登録すれば保育士証は一生涯有効となります。

ただし前述した通り、登録事項の変更時の手続きや紛失時の再発行手続きなどは必要です。


■紛失・破損した場合の再交付の方法

保育士証を紛失または破損した場合には再交付できます。「再交付手引き」を取り寄せ手続きしましょう。このとき再発行手数料1,100円がかかります。

また、紛失の場合以外は、所持している保育士証の送付を求められています。

まとめ

保育士登録と登録を証明する保育士証について、申請方法も合わせて解説いたしました。

保育士として働くためには登録申請しなくてはいけないこと、登録したら大切に保管しておくべきことなどがご理解いただけたのではないでしょうか。

現在保育士として働いていない場合、登録していない方は多いでしょう。しかし保育士として働く可能性を考えているなら、申請から交付まで最短で2ヶ月かかるので、早めに行動することが大切です。

この記事を書いた人
えんみっけ!事務局長 Y.T
「えんみっけ!」の開発・運営の責任者(園児の子どもを持つパパ)です。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。

ユーザー登録がまだの方はこちら 登録済みの方はこちら