【2025年改正対応】保育士の借り上げ社宅制度とは?改正の変更点も解説
ただし、2025年度(令和7年度)から制度の適用条件が大きく見直されました。特に影響が大きいのが「期間の短縮」です。これまでは長く利用できた自治体でも、「採用から5年以内」「利用は最長5年間」といった期限が設けられるケースが増えています。さらに、一部の自治体では利用回数の制限や補助金額の見直しも行われており、従来よりも利用条件が厳しくなっています。
また、待機児童問題の改善や財政負担の増大を背景に、制度の縮小傾向が続いており、将来的にはさらなる見直しが予想されます。
本記事では、保育士の借り上げ社宅制度の基本から2025年の最新改正内容、結婚や転職時の利用可否、実際の自治体事例まで、保育士の皆さんが知っておくべき情報を詳しく解説します。制度を最大限に活用して、安心して保育士としてのキャリアを築いていきましょう。
保育士の借り上げ社宅制度とは?
借り上げ社宅制度とは、保育施設を運営する事業者が保育士のために賃貸住宅を借り上げ、その費用の一部を自治体が補助する制度です。この制度により、保育士は通常よりも安い自己負担額で住居を確保できます。
制度の仕組み
- 事業者(保育園など)が保育士のために賃貸物件を契約
- 家賃の一部を自治体が補助金として事業者に支給
- 保育士は補助後の金額を自己負担として支払う
対象者:従来は幅広い保育士が対象でしたが、令和7年度(2025年)の制度変更に伴い、多くの自治体において利用条件が厳しくなっています。具体的には、対象者が「採用から5年を経過していない常勤職員」に絞られるケースが増えています。ただし、自治体によって細かい条件は異なります。
補助金額:自治体からの助成(月額6〜8万円程度)があるため、実質的な自己負担額は1〜2万円程度、場合によっては0円で済むケースも少なくありません。これにより、物価の高い都心部であっても、生活費を抑えながら安心して勤務を続けることが可能です。
住宅手当との違い
「借り上げ社宅」と「住宅手当」は、どちらも家賃補助の一種ですが、契約形態や税制面で大きな違いがあります。借り上げ社宅の場合、契約主はあくまで「会社(保育園)」であり、行政からの補助金を含めた家賃を会社が支払います。一方、住宅手当は給与に上乗せして支給されるため、所得税の課税対象になる点が異なります。
借り上げ社宅制度
- 事業者が物件を契約し、保育士に貸し出す
- 自治体から事業者への補助金で成り立つ
- 補助額が大きい(月6~8万円程度)
- 契約名義は事業者
住宅手当
- 保育士自身が物件を契約
- 事業者が独自に手当を支給
- 補助額は比較的少ない(月1~3万円程度)
- 契約名義は保育士本人
一般的な住宅手当と比較すると、借り上げ社宅制度の方が助成される金額規模が大きいため、結果として保育士側の金銭的負担をより軽くできる点が大きなメリットです。ただし、物件選びに制限がある場合や、退職時には速やかに退去しなければならないなどの制約もあります。
【2025年最新】法改正による変更点
若手保育士の定着支援として多くの自治体で活用されている「借り上げ社宅制度」ですが、2024〜2025年にかけて、多くの自治体で見直しが行われ大きな変更が加えられています。また、令和8年度(2026年度)以降は、待機児童の減少や地域の実情に応じて、制度の重点配分を見直す方向性が示されています。
年度 対象年数 利用回数 備考
令和6年 採用から6年以内 制限なし 経過措置あり
令和7年 採用から5年以内 1人1回限り 全国的に運用変更が進行中
令和8年 採用から5年以内予定 1人1回限り 概ね令和7年度と同等指針
※全国一律の変更ではなく、自治体によって異なる場合があります。
主な変更点を細かく見ていきましょう。
対象者が採用から5年以内の常勤保育士に
最も大きな変更点は、対象者の制限です。従来は採用年数に関わらず利用できた自治体が多かったのですが、2025年度からは「採用から5年以内」という期限が設けられるケースが増えています。
これにより、長年勤務しているベテラン保育士は新たに制度を利用できなくなる場合があります。ただし、既に制度を利用している保育士については、経過措置として一定期間継続利用が認められる自治体もあります。
制度を利用できる期間が最長5年に
利用期間についても制限が設けられました。従来は利用期間に上限がない自治体も多かったのですが、2025年度からは「最長5年間」とする自治体が増えています。
採用から5年以内に利用を開始し、最長5年間利用できるという形になります。つまり、入職時から利用を開始した場合、5年目までは制度を活用できますが、6年目以降は自己負担での住居確保が必要になります。
利用回数の制限が一部の自治体で追加
一部の自治体では、転職した場合の利用回数にも制限が加えられています。例えば「同一自治体内での転職の場合、通算で5年間まで」といった規定を設ける自治体も出てきました。
これにより、A保育園で3年間制度を利用した後、同じ区内のB保育園に転職した場合、残り2年間しか制度を利用できないケースがあります。
補助金額が変更に
補助金額についても見直しが行われています。多くの自治体では上限額は維持されていますが、一部では段階的に減額する仕組みを導入しているところもあります。
例えば、採用1〜3年目は月額8万円、4〜5年目は月額6万円といった段階的な設定です。また、自己負担額の最低ラインを設定し、保育士側にも一定の負担を求める動きも見られます。
借り上げ社宅制度は終了する?制度の変更が行われる背景
今回の改正により、制度は将来的に終了すると不安に感じる保育士の方も多いでしょう。「借り上げ社宅制度は終了するのでは?」という噂を耳にすることがありますが、現時点では“全国一律で終了する”という発表はありません。
ただし、多くの自治体で縮小・見直しが続いており、将来的に制度の縮小・廃止が進む可能性は高いとされています。制度が見直される背景には、以下のような事情があります。
①待機児童問題の改善:制度が導入された大きな目的の一つは、保育士不足の解消と待機児童問題への対応でした。近年、多くの自治体で待機児童数が減少傾向にあり、緊急性が低下していると判断されています。
②財政負担の増大:借り上げ社宅制度には多額の予算が必要です。自治体によっては年間数億円〜数十億円規模の支出となっており、財政面での負担が課題となっています。
③保育士の定着率向上:制度の導入から数年が経過し、一定程度の保育士確保に成功した自治体では、新規採用よりも既存保育士の定着支援にシフトする動きが見られます。
④制度の公平性への配慮:長年勤務しているベテラン保育士が利用できない一方で、新規採用者のみが手厚い支援を受けられる状況に対し、公平性の観点から見直しを求める声もありました。
将来的な終了については断言できないものの、多くの自治体で見直しが継続的に行われており、今後も縮小する可能性は否定できません。ただし、完全に廃止されるのではなく、より効果的な支援制度へと形を変えていく可能性もあります。
【ケース別に解説】借り上げ社宅制度は利用できる?できない?
借り上げ社宅制度が利用できるかどうかは、個人の状況によって異なります。代表的なケースについて見ていきましょう。
結婚している場合
結婚している保育士でも制度を利用できるかは、自治体によって対応が分かれます。
利用できるケース
- 配偶者と同居する場合でも利用を認める自治体が多い
- 世帯主が保育士本人である必要がある場合もある
- 配偶者の収入制限を設けている自治体もある
利用できないケース
- 配偶者が持ち家を所有している場合
- 配偶者が他の住宅補助を受けている場合
- 自治体が「単身者のみ」と限定している場合
事前に勤務先の施設や自治体に確認することをおすすめします。
同棲している場合
同棲の場合も、自治体によって判断が異なります。
一般的な取り扱い
- 事実婚として認められる場合は利用可能なケースが多い
- 単なる同居人(ルームシェアなど)の場合は利用できる自治体もある
- 住民票の記載内容が判断材料となることが多い
自治体によっては、同棲相手の情報提供を求められる場合もあります。プライバシーに配慮しながら、正確な情報を提供することが大切です。
産休中の場合
産休・育休中の制度利用については、多くの自治体で継続利用が認められています。
利用できるケース
- 産休・育休後に復職する予定がある場合
- 常勤職員としての雇用関係が継続している場合
注意点
- 自治体や施設によっては、休職期間中の補助額が減額される場合がある
- 復職しない場合は制度利用を終了しなければならない
- 休職期間も「利用期間」にカウントされる自治体が多い
産休・育休に入る前に、勤務先の施設で詳細を確認しておくことが重要です。
転職後にも利用できるか
転職後の制度利用については、2025年の改正で特に注意が必要です。
同一自治体内での転職
- 通算での利用期間制限が適用される場合が多い
- 前職での利用期間が新しい職場でもカウントされる
- 一部の自治体では利用回数制限が設けられている
他の自治体への転職
- 転職先の自治体に同様の制度があれば、新たに利用できる可能性がある
- ただし「採用から5年以内」の条件を満たす必要がある
- 自治体によっては「初めての利用」に限定している場合もある
転職を検討する際は、転職先の自治体の制度内容を事前に確認することをおすすめします。
借り上げ社宅制度の事例
実際の自治体での制度内容を見てみましょう。なお、紹介している事例は2025年11月現在の情報をもとにしています。
東京都世田谷区の事例
世田谷区の場合、家賃補助の基準額は月額82,000円に設定されています。そのうちの8分の7(金額にして最大71,750円)を行政が負担してくれるため、非常に手厚い支援内容となっています。
- 補助上限額:月額82,000円を上限基準とし、うち自治体による補助の上限はその7/8の最大71,750円、残りの費用は事業者が負担
- 対象者:改正により対象者は「採用から5年以内の職員」へと変更
- 利用期間:最長5年間
- 対象施設:区内の認可保育所、認定こども園など
世田谷区の場合、家賃8万円の物件であれば、ほぼ自己負担なし〜数千円程度で入居できるケースもあります。ただし、物件の選定には施設の承認が必要で、通勤可能な範囲内という条件があります。
神奈川県横浜市の事例
横浜市でも保育士確保に向けた支援が充実しています。
- 補助の上限:月額82,000円を上限基準とし、うち自治体による補助の上限はその3/4の最大61,000円、残りの費用は事業者が負担
- 対象者:採用後10年目までの保育士(※平成28年4月1日以降の採用者)
- 利用期間:最長10年間(※ただし申請から10年間の利用を保証するものではありません)
- 利用回数:利用は1人1回限り(令和7年度からの新ルール)
- 対象施設:市内の認可保育所、認定こども園、小規模保育事業所など
横浜市は補助額も大きく、制度も手厚いですが、令和7年度からは「1人1回限り」と変更もあります。駅から近いエリアでも自己負担を抑えて住居を確保できるため、通勤の利便性も確保しやすいのが特徴です。(※制度移行期のため、採用時期により適用条件が異なります。詳細は必ず募集要項をご確認ください)
借り上げ社宅制度が利用できる園の探し方
借り上げ社宅制度を利用したい場合、どのように求人を探せばよいのでしょうか。
①求人情報の確認項目
- 「借り上げ社宅制度あり」と明記されているか
- 補助額や自己負担額の目安
- 利用条件(採用年数、雇用形態など)
②自治体の情報を確認
- 自治体のホームページで制度実施状況を確認
- 対象施設のリストが公開されている場合もある
- 問い合わせ窓口で詳細を確認できる
一覧表を公開している自治体もあるので、自分が希望する勤務先の自治体のホームページを探してみるとよいと思います。
③保育士専門の求人サイトを活用
- 「借り上げ社宅制度」で絞り込み検索ができるサイトが便利
- 複数の施設を比較検討できる
- 制度の詳細情報が掲載されていることが多い
④転職エージェントに相談
- 保育士専門のエージェントは制度に詳しい
- 自分の状況に合った施設を紹介してもらえる
- 制度の利用条件について事前に確認してもらえる
⑤面接時に必ず確認
- 制度の詳細(補助額、利用期間、条件など)
- 物件選びの自由度
- 退職時の取り扱い
- 更新時の条件変更の可能性
求人情報に「借り上げ社宅制度あり」と記載があっても、実際の補助額や条件は施設によって異なります。応募前や面接時にしっかり確認することが大切です。
まとめ
保育士の借り上げ社宅制度は、住居費の負担を大きく軽減できる非常に魅力的な制度です。2025年度の改正により対象者や利用期間に制限が加えられましたが、条件を満たせば引き続き活用できます。
重要なポイント
- 2025年度から多くの自治体で「採用5年以内・利用期間最長5年」に変更
- 将来的な縮小の可能性はあるものの、当面は継続見込み
- 結婚や産休などのケースでも利用できる場合が多い
- 転職時は通算期間に注意が必要
- 自治体や施設によって制度内容が大きく異なる
制度を活用することで、給与の多くを住居費に充てる必要がなくなり、経済的な余裕を持って保育士として働くことができます。ただし、制度は今後も変更される可能性があるため、最新の情報を定期的に確認することをおすすめします。
就職・転職を検討する際は、借り上げ社宅制度の有無や内容も重要な判断材料の一つとして、自分に合った職場を選びましょう。制度について不明な点があれば、自治体の窓口や勤務先の施設に遠慮なく問い合わせることが大切です。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。
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