保育士資格取得特例制度をわかりやすく解説|対象者・要件・期限・申請方法など

資格・試験
公開日:2026.03.23 更新日:2026.03.04
保育士資格取得を目指す幼稚園教諭免許状保有者に対して、幼稚園等での実務経験が考慮され、比較的容易に保育士資格が取得できる「保育士資格取得特例制度」というものがあります。
本記事では、幼稚園教諭免許状を持つ方が保育士資格を取得しやすくなる「保育士資格取得特例(幼保特例)」について、対象者・要件・期限・申請の流れをまとめて解説します。

保育士資格取得特例制度(幼保特例)とは

保育士資格取得特例制度は、「幼保連携認定こども園(以後認定こども園)」で勤務するために必要な「保育教諭」を増やすことを目指して制定されました。


認定こども園とは、待機児童対策の一環として2015年に創設された、保育園と幼稚園それぞれの役割を併せ持つ施設です。


どちらも子どもに関わる仕事ではありますが、「保育」をする保育園はこども家庭庁の管轄であり、一方、「教育」を行う幼稚園は文部科学省の管轄となっています。


必要な資格も、保育園に勤務するためには保育士資格、幼稚園に勤務するためには幼稚園教諭免状となっていました。


しかし、保育園と幼稚園両方の役割を併せ持つ認定こども園で働く場合、保育士と幼稚園教諭免状の両方を持つ「保育教諭」であることが条件となります。現状としては、両方の資格を持つ保育教諭は、なかなかいません。

そのため、こども家庭庁では幼稚園教諭免許状を保有している人を対象に、短期間で保育士資格を取得できる保育士資格取得特例制度を制定したのです。


認定こども園で勤務できる資格保有者を増やすことを目指して制定された保育士資格取得特例制度は、こども家庭庁の定める条件を満たしていれば、利用することができます。

具体的には、保育士養成施設における「学び」と、幼稚園などでの「実務経験」がその条件です。

保育士資格取得特例制度を利用するメリット

保育士資格取得特例制度を利用すると、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。


短期間での資格取得が可能

特例制度では、対象施設での実務経験(原則:3年かつ4,320時間)に加えて、指定保育士養成施設で特例科目を修得することで、保育士試験の筆記および実技の免除を受けられます。

参考:こども家庭庁


保育士資格を大学や短大、専門学校で取得する場合、毎日通学し、数週間に渡る施設での実習も必要となりますから、現在幼稚園教諭として仕事をしている場合は両立が大変ハードなものとなります。


しかし、特例制度を利用すれば、週1回〜2回程度の通学、または通信講座での受講が可能です。受講期間も、最短で半年となっています。

この条件なら、現在の仕事を続けながら、無理せずに資格取得を目指すことが可能です。


幼稚園教諭として勤務している場合でも、仕事を継続して保育士資格を取得できるというのは、園にとっても大きな魅力といえるでしょう。幼稚園や保育園が認定こども園に移行するケースは、年々増加傾向にあります。


こども園に移行したいと検討していても、保育士資格と幼稚園教諭免許状両方を保有している保育教諭がいない場合は対応できません。


保育士資格取得特例制度は、保育園や幼稚園をこども園に移行する場合に、現在勤めている保育士や幼稚園教諭をキープしながら保育教諭になるための学びを進めてもらうことができるという意味でも大変役立ちます。

学習費用が抑えられる

保育士資格を取得しようとすると、一般的には大学や短期大学、専門学校などに通学して学ぶ必要があります。そうなると、総額200万円ほどの学費が必要となりますが、保育士資格取得特例制度を利用すれば10万円台から資格取得を目指すことが可能です。

就職・転職に有利

幼稚園教諭免許状と保育士資格両方を保有している保育教諭は、認定こども園だけでなく、保育園、幼稚園でも仕事をすることが可能です。


人材不足に悩む園としても、現在保育士資格を保有しているものの、家庭の事情などで保育士の仕事をしていない潜在保育士が、この制度によって「もう一度、子どもたちに携わる仕事をしてみよう」と考えてくれるようになれば、人材不足を解決することにつながります。



保育士資格取得特例制度の基本情報

それでは、保育士資格取得特例制度の基本的な情報を見ていきましょう。

参考:こども家庭庁

保育士資格取得特例制度実施期間

令和11年度末(2030年3月31日)まで

保育士資格取得特例制度の実施期間は、令和11年度末(2030年3月31日)までとなっています。当初、令和6年度末(2025年3月31日)をもって終了する予定でした。しかし、期間がさらに「5年間」延長されることが決定したため、現在も引き続きこの制度を利用して資格取得を目指すことが可能です。

令和11年度末(2030年3月31日)の時点で、指定施設での「実務経験」と、大学等での必要単位の「修得(学び)」という2つの条件を終えていれば、それ以降の試験においても特例を利用した受験申請(全科目免除)が可能となります。

特例制度対象者

1. 幼稚園教諭免許を保有している

保育園や幼稚園で現在就労していなくても、幼稚園教諭免許を保有していれば対象となります。


2. 実務経験がある

令和11年度末(2030年3月末)までに以下の施設で「3年以上かつ4,320時間以上の実務経験」と、指定科目の履修を終えていることが条件。


令和5年(2023年)に新設された「幼保2年特例(更なる特例制度)」は、特定の条件を満たすことで、修得すべき単位数がさらに軽減される制度です。この特例では、3年特例の要件に加えて、幼保連携型認定こども園で保育教諭として2年以上かつ2,880時間以上の実務経験がある場合、修得が必要な単位数が8単位から6単位に軽減されます。

内訳として、以下の2つの経験を両方クリアしなければなりません。

  1. ベースとなる実務経験(従来の3年特例分) 幼稚園などの対象施設での実務経験「3年以上」かつ「実労働4,320時間以上」
  2. 上乗せとなる実務経験(幼保2年特例分) 「幼保連携型認定こども園」において、「保育教諭」として勤務した実務経験「2年以上」かつ「実労働2,880時間以上」

実務経験は、複数の施設での勤務期間を合算したものでも可能です。1つの園で5年間継続して働く必要はなく、転職などで複数の対象施設を経験している場合でも、条件に当てはまる期間と時間数であれば全て足し合わせて計算することが可能です。

※正規の職員ではない場合も、実務経験年数として換算可能ですから、パートやアルバイトなどの雇用形態は不問となっています。ただし、勤務先または勤務地の教育委員会に事前に確認する必要があるので、注意してください。また、事務などで幼稚園に勤務していた場合は、実務経験には該当しません。

※認定こども園のリーダーとして重要な役割を担う「主幹保育教諭」や「指導保育教諭」。これらの役職に就くためには、保育士資格と幼稚園教諭免許状の「両方」を保有している必要があります。


しかし、施設への円滑な移行と現場の人材確保に配慮し「どちらか一方の資格・免許だけでも、特例としてこれらの役職に就くことができる」という経過措置が設けられました。当初「認定こども園法施行から10年の令和6年度末まで」という期限付きでした。


しかし、働きながら一方の資格を取得するという難しさなど、深刻な実情を踏まえ見直しが行われ期間が2年間延長、施行から合計「12年間」、つまり「令和8年度末まで」継続されることとなりました。


対象施設一覧

・幼稚園

学校教育法第1条に規定する、特別支援学校幼稚部も含む幼稚園

・認定こども園

未就学児の教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律で認定された認定こども園(2006年法律第77号)

・保育所

児童福祉法第39条第1項に規定される保育所

・小規模保育事業所

児童福祉法第6条の3第10項に規定される小規模保育事業第27条が規定する小規模保育事業A型および小規模保育事業B型に限ります。

※こちらは2015年以降の新規事業のため、対象期間前の勤務が対象期間として認められるかは各都道府県の保育主管課への確認が必要です。

・事業内保育事業所

児童福祉法第6条の3第12項が規定する事業内保育事業を展開する定員6名以上の施設。

※こちらも、対象期間前の勤務が対象期間として認められるかは各都道府県の保育主管課への確認が必要となります。

・公立認可外保育施設

国、都道府県、市町村が設置する施設であり、児童福祉法第29条第1項が規定する業務を目的とした施設。

・離島そのほかの地域における特例保育(子ども・子育て支援法第30条第1項第4号に規定される特定保育)を実施する施設

・幼稚園併設型認可外保育施設

児童福祉法施行規則第49条の2第4号に規定される施設。

・認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書を受けている認可外保育施設

2005年1月21日雇児発第0121002号による「施設認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付について」の証明書交付を受けた施設

保育士資格取得特例制度が利用できるケース

では、具体的に保育士資格取得特例制度が利用できるケースを見ていきます。

条件内容
対象者条件を満たしている保育士資格取得特例制度を利用するには、必要な資格および実務経験の両方を満たしている必要があります。

両方の条件を満たしている場合に限り、制度を利用することが可能です。
定められた期間内に学びが完了している保育士資格取得特例制度は、令和11年度末(2030年3月31日)まで利用可能です。

受験申請までに、指定された科目の履修(学び)をすべて完了していることが条件となります。

保育士資格取得特例制度の利用を申請する方法

勤務しているスタッフから、保育士資格取得特例制度を利用する場合は、どのような流れで申請するのでしょうか。

実務証明の取得

保育士資格取得特例制度を利用するためには、これまでの幼稚園教諭としての勤務実績が必要となります。

該当するスタッフがこれまで勤務していた施設に個別に連絡をして、実務証明を発行してもらう必要があります。

勤務していた施設が対象施設となるかの確認は、各都道府県で対象施設一覧を作成していますので、そちらを確認してください。

もし、勤務していた園が廃園となっていた場合も、運営事業体が存続している場合は証明することが可能です。

合併などで施設名が変更されている場合も、引継がれた先の施設で証明可能な場合は、それも認められることとなっています。

専修証明の取得

保育士資格取得特例制度を利用するスタッフは、こども家庭庁が指定する保育士養成施設での特例科目履修が必須となります。

履修後には、保育士養成施設から「専修証明」を発行してもらう流れとなります。

保育士試験受験申込

保育士資格取得特例制度を利用し、保育士試験の受験を全科目免除される場合も、保育士試験受験申込が必要となります。


保育士試験の受験申込で使う「実務証明書」については、必ず保育士試験事務センターが用意した公式様式を使う必要があります。


通常、保育士試験は、筆記試験8科目・実技は音楽・造形・言語表現から2科目を選択して受験します。ただし、保育士資格取得特例制度を利用した場合、筆記試験は特例科目受講、実技試験は幼稚園等での実務経験により免除されます。


実際には受験しないのに受験料を支払うことになりますが「全科目免除」=「受験不要」と誤解して受験申込をしないと、保育士資格取得特例制度を利用することができないので注意しましょう。なお、全科目免除となる場合は受験料が割り引かれることとなっています


保育士資格取得特例制度を利用して出願する際に必要な書類
・実務証明書(原本)
・幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書(原本)
・幼稚園教諭免状の写し

保育士登録手続き


保育士試験合格通知が到着次第、各自保育士登録を行う必要があります。

登録完了まで、平均2カ月ほどの時間が必要です。

資格取得に必要な保育士養成施設における「学び」

保育士資格取得に必要とされる保育士養成施設における「学び」は、最大8単位(4科目各2単位)が必須となります。単位を修得するためには、保育士養成施設におおよそ20日程度の通学が必要です。

必須となる科目

必須となる科目は、以下の4科目です。これを「特例科目」と呼びます。

特例科目福祉と養護(講義2単位)
子ども家庭支援論(講義2単位)
保健と食と栄養(講義2単位)
乳児保育(演習2単位)

免除となる科目

特例科目を指定保育士養成施設で受講すると、幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書(特例教科目)が発行され、以下の通り筆記試験科目が免除となります。なお、修得した科目が筆記試験科目にどのように対応するかは、各指定保育士養成施設に確認する必要があります。


指定保育士養成施設ごとに、科目の名称や科目数が異なることがありますから、注意が必要です。また、過去に保育士養成施設における学びの経験が過去にある場合は、修得単位数が変動するケースもあります。


先述の通り、過去に通学した保育士養成施設から専修証明を取得すれば、自分にどの単位が必要か確認することが可能です。

試験科目該当する特例教科目
子ども家庭福祉福祉と養護(こども家庭福祉)
社会福祉福祉と養護(社会福祉)
子ども家庭福祉福祉と養護(こども家庭福祉)
子ども家庭福祉論(こども家庭福祉論)
子どもの保健
子どもの食と栄養
保健と食と栄養(子どもの保健・子どもの食と栄養)
保育原理乳児保育(乳児保育Ⅰ・Ⅱ)
子ども家庭支援論(子育て支援)
社会的養護福祉と養護(社会的養護Ⅰ)

※指定保育士養成施設によっては、特例教科目の()内に書かれている名称で表記されていることもあります。

参考:一般社団法人「全国保育士養成協議会」

幼稚園等における「実務経験」と指定保育士養成施設における「学び」の順番は不問となっていますので、どちらが先でも問題ありません。

例えば、幼稚園教諭免許を保有している人が、保育士資格取得特例制度を利用したいと考えた時点で実務経験の条件を満たしていなかったとします。

そのような場合はあらかじめ必要となる単位を取得しておき、実務経験が3年かつ勤務時間が4,320時間を超えてから申請をすることも可能です。

詳しくはこども家庭庁HP『幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例』にて、確認してください。

保育教諭育成が認定こども園への移行には不可欠

少子化が進む一方で、共働き家庭の増加や多様化する保育ニーズにより、現場における人材確保は依然として深刻な課題となっています。

2015年の「幼保連携型認定こども園」誕生で、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を持つ「保育教諭」の配置が原則となりました。

移行をスムーズに行うため、どちらか一方の資格・免許があれば勤務できる「経過措置」が取られました。この措置は当初5年間の予定でしたが、現場の深刻な人材不足を背景に延長が繰り返され、現時点での期限は令和11年度末(2030年3月31日)となっています。

期限が延びて猶予が生まれた今こそがチャンスです。在職中の幼稚園教諭免許状保有者がこの特例制度を活用し、両免併有(保育教諭)への道を進むことは、自身のキャリアアップはもちろん、園の質の向上と安定した体制づくりに直結する大きなプラスとなります。

新たな期限に向けて、余裕を持った計画的な制度の活用を、ぜひ検討してみてください。

この記事を書いた人
えんみっけ!事務局長 Y.T
「えんみっけ!」の開発・運営の責任者(子育て奮闘中パパ)です。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。

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