【2022年2月スタート】保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業について

2022.05.11 | 給料・環境
「保育士処遇改善等加算」は、2013年にスタートした制度です。
保育士の労働環境を整備し、安心して仕事を継続するための大変重要な制度といえます。

保育士の人材確保は、保育園が安定したクオリティの高い保育サービスを提供することにもつながるため、保育士が長く活躍できる職場構築というのは、保育の質向上という意味でも必要不可欠です。
保育士処遇改善等加算について、詳しく解説します。

1.保育士の賃上げ実施された背景について

保育士処遇改善等加算は仕事の責任が大きく、業務量も多い保育士の収入面をサポートするために始まった制度です。

1.1.保育士の処遇改善とは

業務量の多さや責任の重さに対して、保育士の給与の低さがかねてから問題視されてきました。

保育士の離職理由に、給与の低さは大きく影響しており、政府は保育士人材確保をするため、2013年に処遇改善等加算をスタートしました。

保育士の賃上げを行い、働くモチベーションを保つことを目的としています。


また、保育士資格を有しながらも、さまざまな事情で保育の現場から離れていた潜在保育士にも、再び活躍してもらうための施策でもあります。

1.2.保育士の処遇改善で何が変わる?

共働き世帯増加に伴い、保護者が就労している間に保護者に代わって保育をする保育士を確保するために、国も積極的に動き始めました。

保育士は業務量や責任の大きさに対して、給与水準がかねてから低いと問題視されており、その立場に見合ったふさわしい評価、給与を得られるように改善していく取り組みが急がれていたのです。


その対策の一つとしてスタートしたのが処遇改善等加算です。

この処遇改善等加算で、職員の賃金改善を実施することで、職員の定着が期待されています。


処遇改善等加算は、2022年4月現在、以下の3種類が実施されています。


・処遇改善等加算Ⅰ

・処遇改善等加算Ⅱ

・保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業


それでは、それぞれを詳しくみていきましょう。

2.処遇改善等加算Ⅰについて

2015年に開始された処遇改善等加算Ⅰは、保育士を確保することや、保育の質を向上させることを目的として始まりました。

2.1.概要

処遇改善等加算Ⅰは、平均勤続年数やキャリアアップで加算率が上がっていく仕組みです。

2.2.対象者について

処遇改善等加算Ⅰは、認可保育園に勤務する正職員をはじめ、1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトといった非正規職員も対象です。

2.3.実施要件について

処遇改善等加算Ⅰの加算率については、平均経験年数に応じてアップする仕組みです。

基礎分、賃金改善要件分それぞれが加算されます。

基礎分とは

基礎分は、職員一人当たりの平均勤続年数に応じて人件費加算率を決めます。

例えば、平均勤続年数が1年未満の場合、その割合は3%となり、2年だと4%というように、1年増えるごとに加算率が1%ずつ増えていくのです。

平均勤続年数が10年以上になると、一律12%となります。

賃金改善要求分

賃金改善要求分は、施設が実施する保育士への賃金改善の取り組みに対して支払われるものとなります。平均勤続年数から人件費の加算率を計算する仕組みです。

例えば、11年未満の場合は6%、11年以上になると7%がプラスされます。

キャリアパス要件分

保育士のキャリアパスに力を入れている施設に対して、支払われるのがキャリアパス要件分です。

役職や職務内容をベースに勤務条件や研修実施の有無、職員への周知が行われているかなどが要件とされています。

要件を満たさなければ、賃金改善要件分より2%減額となります。

2.4.対象となる施設や事業所

対象となる施設は認可外保育園などとなります。

また、以下の施設での勤続経験がある職員に関しては、その年数も合算して勤続年数とすることが可能です。


・幼稚園

・小学校

・中学校

・高等学校

・中等教育学校

・特別支援学校

・大学

・高等専門学校、専修学校

・社会福祉事業を行う施設、事業所

・認可外保育施設

・病院

・診療所

・介護老人保健施設

・助産所

・児童を一時保護する児童相談所

2.5.注意すべきポイント

処遇改善等加算Ⅰは、保育士の賃上げを目的とした取り組みです。

平均経験年数に応じて、賃金が上がるしていくシステムですから、安定した賃上げが実現できるようになりました。

加算される対象は正職員に限らず、非常勤職員も含む、全職員とされています。

3.処遇改善等加算Ⅱについて

処遇改善等加算Ⅱは、保育士の処遇改善に積極的に取り組んでいる施設や事業所に、キャリアアップによる処遇改善に必要となる費用を加算する仕組みです。

3.1.概要

保育士の役職は、これまで「園長」「主任保育士」などしかなく、保育士がキャリアアップをするのは難しい状況にありました。

その問題をクリアにするために、2017年に改善等加算Ⅱが導入されたのです。

処遇改善等加算Ⅱは、若手保育士や、中堅保育士もキャリアアップしやすいように、役職を増設し、賃上げできる環境を確保することを目的としています。


具体的には、以下のキャリアアップ研修が実施されるようになりました。

副主任保育士

副主任保育士は、以下条件を満たしている場合、処遇改善を受けることができます。

処遇改善額は月額4万円で、以下の条件を満たしていることが要件となっています。


・おおむね7年以上職務分野別リーダーを経験していること

・計3分野以上の専門研修及びマネジメント研修を修了していること

・副主任保育士として、発令を受けていること

専門リーダー

専門リーダーは、以下条件を満たしていることを条件に、処遇改善を受けることができます。

処遇改善額は、副主任保育士と同額の4万円です。

役職に就くための要件は、以下の通りとなっています。


・職務経験年数がおおむね7年以上であること

・計4分野以上の専門研修を修了しており、職位の発令を受けていること

職務分野別リーダー

職務分野別リーダーは、以下条件を満たしていることを条件に月額5,000円の処遇改善が受けることができます。


・職務経験年数がおおむね3年以上であること

・6分野の内、担当する職務分野の研修を修了していること

・職位の発令を受けていること

3.2.対象者について

3年〜7年以上の保育士経験があり、以下キャリアアップ研修を規定されている数修了することが対象となるための条件です。

管理職にまではまだ到達していないものの、実務経験を重ねているリーダーレベルになり得る職員が対象となっています。


具体的には、認可保育園等に勤務している園長や主任保育士を除いた正規職員、1日6時間以上かつ月20日以上勤務しているパート・アルバイトといった非正規職員が対象となります。

3年〜7年以上保育士経験があること、そしてキャリアアップ研修を決められた数を修了することが条件となっています。


キャリアアップ研修には、以下のものがあります。

・乳児保育

・幼児保育

・障害児保育

・食育/アレルギー

・保健衛生/安全対策

・保護者支援/子育て対策

3.3.実施要件について

処遇改善等加算Ⅱは、以下の要件を満たしていることが条件となります。


・確実に加算額を賃金改善に充てることを条件とし、賃金改善計画の策定及び実績報告を行うこと

・処遇改善の対象者が規定の基準を満たしていること

・月給(職務手当を含む)により、賃金改善が実施されていること

3.4.対象となる施設や事業所

処遇改善等加算Ⅱは、キャリアパスを構築して、保育士の処遇改善に積極的に取り組む施設や事業所に加算されます。

3.5.注意すべきポイント

処遇改善等加算Ⅱを受けるためには、キャリアアップ研修が必須となります。

キャリアアップ研修を受けるためには、ある一定の経験が求められるので注意が必要です。

研修に参加する場合は、一つの分野につき15時間以上の受講が必須となりますので、研修に参加する時間も確保しなくてはいけません。


また、副主任保育士と専門リーダーに関しては、園長、そして主任保育士を除いた保育士等全体の約3分の1、職務分野別リーダーは園長、主任保育士を除いた保育士等全体の約5分の1までと上限が決められています。

要件を満たしたとしても、必ずしも役職に就けるとは限らないということを、理解しておきましょう。

4.保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業について

では、2022年2月からスタートした保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業とは、どのようなものなのでしょうか。

4.1.概要

少子化問題や新型コロナウイルス感染症の影響を受け、保育士を取り巻く環境は厳しいものとなっていることを問題視した政府が、2022年2月から保育士の収入を3%、月額にするとおよそ9,000円の賃上げを行う措置を実施することになりました。

これが、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業です。


一時的な賃上げではなく、今後も賃上げ効果が継続できるように取り組むことを前提として、この事業はスタートします。

4.2.対象者について

処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱは、それぞれ保育に関わる職員を対象として実施されてきました。

しかし、今回の保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業では、施設に従事しているすべての職員が対象となります。

雇用形態についても正規・非正規を問わず、職種も栄養士や調理師、事務職員など施設に勤務しているすべての職員が対象です。

ただし、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業では、法人役員を兼務している施設賞は、その対象からは外れます。

この点が、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱのとの大きな違いといえるでしょう。


また、預かり保育や延長保育のみに従事する職員も、今回は対象外となりますので、注意しましょう。

4.3.実施要件について

実施要件では、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。


1.2022年2月から基本給または毎月の手当の賃金改善を行う

2.事業者は、賃金改善計画書や事業報告書を作成して市区町村に提出する。事業計画については、該当職員に対して周知すること

3.補助額全額を、賃金改善に充てること

4.改善額全体の3分の2以上を基本給、または毎月支払われる手当に充てること

5.改善を実施する賃金項目以外の賃金項目水準を低下させないこと


補助額の全額を賃金改善に充てることが、今回の保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の要件となっています。

4.4.対象となる施設や事業所

対象となる施設は、以下の通りです。


・保育所

・幼稚園

・認定こども園

・家庭的保育事業

・小規模保育事業

・居宅訪問型保育事業

・事業所内保育事業

・特例保育を行う施設

・公立の施設・事業所

※私学助成を受ける幼稚園は、文部科学省事業による補助となりますので、注意してください。

4.5.2022年10月以降について

保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業は、2022年9月までが特例期間となっています。つまり、2022年10月以降は特例期間対象外となるということです。


「それでは2022年10月以降は、以前のお給料に戻ってしまうの?」と心配になるかもしれません。

しかし、現在「2022年10月以降においても、本事業により講じた賃金改善の水準を維持すること」とされています。

事業としては2022年10月以降も、公定価格の見直しにより、同程度収入引き上げ措置が継続することが予定されているのです。

2022年夏頃の令和4年人事院勧告の内容を踏まえて検討することになりますので、今後の続報を待ちましょう。


参考・出典:内閣府「子育て支援事業者の方向け情報

5.保育士として活躍するために、処遇改善はぜひフル活用を!

保育士の賃上げが目的とされている処遇措置は、基本的に事業所を通して実施されます。

ご自身が勤めている園では、どのような対応となるのかを確認するようにしましょう。


また、自治体によっては同様の処遇改善が実施されているケースもあります。

家賃補助や、国が実施している処遇改善に上乗せする形で給与が支払われるケースなど、様々なものがあるため、しっかりと調べ活用できるものは使っていきましょう。


キャリアアップや、安心して働くことができる環境を手に入れるためにも、処遇改善は大変役立ちます。

保育士として長く活躍し続けるためにも、ぜひ積極的に情報収集するようにしていきましょう。

この記事を書いた人
えんみっけ!事務局長 Y.T
「えんみっけ!」の開発・運営の責任者(園児の子どもを持つパパ)です。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。

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