公務員保育士と私立保育士の待遇はどのくらい違う?比較して解説

2022.02.09 | 給料・環境
公務員保育士と、私立保育士の違いを知っていますか?
「保育士として仕事をする」ことは変わりませんが、採用方法や待遇などには様々な違いがあります。

保育士として一生仕事をしたいと考えている人にとって、勤務時間や休暇などの待遇や年収、仕事内容といった点では公務員保育士はとても魅力的な働き方といえます。
一方、自分の理想とする教育方針や、教育理念を掲げている保育園で保育士として仕事をすることも、保育士の醍醐味といえるでしょう。

「どちらが自分に合っているの?」と迷っている場合は、まずは公務員保育士と私立保育士の違いについて、理解することから始めましょう。
公務員保育士と私立保育士は、なる為の道も異なりますから、しっかりとチェックし、自分に適している働き方はどちらかを検討してみて下さい。

公務員保育士と私立保育士の違い

公務員保育士と私立保育士の違いには、次のようなものが挙げられます。

1.1.勤務先・運営母体

公務員保育士が勤務する公立保育園は、市区町村といった自治体が運営する認可保育園となります。

自治体が運営する保育園は様々な基準をクリアしている為、安心して勤めることができます。

また、どの園でも保育の質が一定であり、安定した保育が実施できる点を魅力と感じる人も多いようです。


私立保育園は、学校法人やNPO法人、社会福祉法人など運営母体が様々です。

営利目的の園も多く、豊富な施設形態が存在していることも大きな特徴となっています。

幼稚園と保育園両方のニーズに対応できるように整備された「こども園」は、その代表格といえるでしょう。


1つ注意しておきたいのが、私立保育園には国の基準を満たしている「認可保育園」と、それ以外の「認可外保育園」があることです。

国の基準をクリアしている保育園が「認可保育園」、国の基準を満たしていない保育園を「認可外保育園(無認可保育園)」となります。

認可外保育園には企業内や院内託児所、ベビーホテルなどがあります。

認可保育園は国の基準をクリアしていて、補助金なども得ている為、安定して働くことができます。

また、環境が整った保育施設で、保育士として経験を積みやすいというのも魅力でしょう。


認可外保育園は、場合によっては基準を満たしていても、園の特徴を打ち出す為にあえて認可外として運営しているケースもあります。

また、規模が小さく託児所や夜間保育園、ベビールーム、ベビーホテルなどとして展開している認可外保育園では、子ども一人ひとりによりそった、アットホームな保育が実現できます。


どちらが自分のイメージする働き方に近いのか、よく検討しておきましょう。

1.2.給与・福利厚生などの待遇

公務員保育士と私立保育士の給与や、福利厚生はどのようになっているのでしょうか。

公務員保育士

公務員保育士は給与が安定しており、昇給や賞与といった福利厚生も充実しています。

各種保険関係もしっかりしており、有給休暇取得や産休・育休取得もしやすい環境にあるというのも魅力です。


また、勤続年数に応じて昇給があるのも働く上でのモチベーションになります。退職金制度もある為、保育士として長く安心して働くことができる環境といえるでしょう。

私立保育士

私立保育園の場合、園の経営状況次第で給与や待遇が左右されるケースもあります。

近年では保育士の待遇改善が社会問題としても大きく取り扱われるようになり、厚待遇の園も増加傾向にあります。

応募をする際には、雇用条件・就業規定などをしっかりとチェックしましょう。

1.3.保育方針

保育方針についても、比べてみましょう。

公務員保育士

公務員保育士が勤務する公立保育園は、基本的に各自治体によって決められたものを基準として保育が行われます。

その為、園によって保育の質や保育内容に大きな違いはありません。

私立保育士

公立保育園と違い、園によって個性を打ち出している保育園が多くあります。

音楽や英語、運動、美術などオリジナルのカリキュラムを打ち出している園が多い為、保育士自身の興味や関心がある特色を持つ園を見つけることが可能です。

また、保育士への裁量も大きい傾向にあり、自分のアイデアや特技を活かせる場面が多いのも特色といえるでしょう。

1.4.勤務時間・残業

公務員保育士と私立保育士では、勤務時間や残業時間に違いがあるのでしょうか。

公務員保育士

公務員保育士の場合は、定時で退社できるケースが殆どです。

勤怠管理がきっちりしており、緊急を要する場合以外は残業することはまずありません。

私立保育士

私立保育士の場合、勤務時間は原則8時間となっていますが、残業や持ち帰りの仕事などが発生するケースも多いのが実情です。

園によって勤務体系は様々ですから、自分のライフスタイルにあった、働きやすい園を選ぶようにしましょう。

1.5.異動や転勤の有無

公務員保育士と私立保育士の移動や転勤について、実情はどの様なものなのでしょうか。

公務員保育士

公務員保育士の場合、地方公務員という扱いになります。

採用された自治体内での異動は、3~4年ごとに一度あると考えましょう。


場合によっては保育園以外の児童福祉施設や、子育て支援センターに転勤する可能性もあります。

保育園勤務ではありませんが、小さな子どもに関わる仕事ですので、それほど不安に感じる必要はないでしょう。


事情があって両親のもとで暮らせない子どもたちを保護し、養育する児童福祉施設での仕事は、子どもたちの親としての役割を担います。

子育て支援センターの場合は子どもたちの遊びを見守りながら、保護者の相談に乗り、フォローする子育てアドバイザーとして対応するのが仕事です。


異動により、働く環境や勤務体制が変わりますが、子どもに携わる仕事という意味では同じです。

保育士としてのステップと考え、前向きに取り組む姿勢を持つようにしてください。

私立保育士

私立保育士の場合も、複数の保育園を運営しているようなケースでは、数年で異動となることもあります。

同じ保育園でキャリアを重ねたいと考えている場合は、就職活動の際に他の系列保育園を持っていないかを確認しましょう。

1.6.就職方法

公務員保育士と、私立保育士の就職方法には、どの様な違いがあるのでしょうか。

公務員保育士

公務員保育士は地方公務員となる為、採用されるには保育士資格を取得し、その上で地方公務員採用試験に合格する必要があります。

地方公務員採用試験に合格すると、自治体の採用候補者名簿に1年間掲載され、それを見た保育園からオファーがあった時に初めて採用となります。

地方公務員採用試験に合格しても、採用候補者名簿に掲載されている期間内に園からオファーがなかった場合、次の年も公務員保育士を目指すならもう一度地方公務員保育士採用を受ける必要があります。

私立保育士

私立保育士は、志望する園にエントリーし、書類審査や面接を経て採用となります。

私立保育士を目指す場合は園の方針や教育理念をよく理解し、自分が理想とする教育に沿っているかを見極めてから応募することが大切です。


一次試験は書類選考が基本で、履歴書や卒業見込み証明書、保育士資格証明書などの資料が必要となります。

一次試験に合格すると、面接や実技試験、論作文が実施されるのが一般的です。

公務員保育士と私立保育士を比較!メリット・デメリット

公務員保育士と、私立保育士ではどの様なメリットやデメリットがあるのでしょうか。

2.1.公務員保育士のメリット・デメリット

公務員保育士として仕事をする場合の大きなメリットは、やはり安定した環境で仕事ができるという点にあるでしょう。


残業なども少なく、休暇も比較的取りやすい為、結婚や妊娠、出産を経ながらも仕事を継続しやすい環境が整っています。

また、定期的に異動がある為、メンバーや職場環境が一新されることに魅力を感じている人も多いようです。


一方、デメリットとしてはまず倍率が非常に高く、難関資格であることが挙げられます。

さらに、合格した場合でも、採用候補者名簿には1年しか登録されません。

その為、1年以内に園から採用申し出がない場合は、再度地方公務員採用試験に受かる必要があります。

安定して仕事をしたい、すぐにでも就職したいと考える場合は、この点はデメリットといえるでしょう。


また、定期的な異動があるのも、環境の変化が苦手な人にとっては大変に感じるようです。

自分が性格的に向いているかどうかをよく検討して、働き方を選ぶことが大切と考えましょう。

2.2.私立保育士のメリット・デメリット

私立保育士のメリットは、自分が理想とする保育に近い教育理念を持つ園を、自分で選べるところです。

シュタイナー教育やモンテッソリー教育といった教育法や、キリスト教や仏教といった宗教系、その他にも知育系や体育系、はだし教育といった様々な教育方針から、自分にとって「魅力的だ」と感じる教育を実施している園を、就職先として選ぶことができるのです。

採用されるかどうかは別問題として、最初から「就職したい!」と感じた園だけを受けられるというのはミスマッチを防ぐのに大変有効になります。


また、施設が綺麗で、整備されているところも、魅力と感じる人が多いようです。

子どもたちが使用する教具や遊具だけでなく、保育士が使用するロッカールームやミーティングスペースなども整っている園が多いので、綺麗な職場で仕事をしたい人にとっては嬉しい環境といえるでしょう。

公務員保育士と私立保育士、どちらに向いている?

条件やメリット・デメリットを加味した上で、自分がどちらに向いているか考えてみましょう。

3.1.待遇の良さ・安定を求めるなら公務員保育士

待遇の良さや、安定という意味では公務員保育士は大変魅力的な働き方でしょう。


保育業界は、その待遇改善が叫ばれ、少しずつ実現されている業界ではありますが、まだまだ充実しているとは言い難いのが現状です。

そういった意味では公務員保育士の場合、サービス残業や休日出勤なども少ない為、安心して仕事に取り組める環境が整っているといえるでしょう。

3.2.長く働くなら公務員保育士

私立保育士と比べて、公務員保育士は離職率が低い傾向にあります。

その理由は、働きやすい職場環境や、様々なライフイベントに合わせて休暇が取得しやすいといった働きやすさが挙げられます。

安心して長く働きやすい環境が、公務員保育士には整っています。

3.3.すぐに確実に働きたいなら私立保育士

公務員保育士の場合は、採用試験に合格した場合でも実際に仕事に就けるかどうかは分かりません。

不確定な要素も大きく、1年ごとに採用試験を受けなければならない為「今すぐに働きたい!」という人には不向きな働き方といえるでしょう。

すぐに、確実に仕事をしたい場合は、私立保育士がお勧めです。

3.4.特徴のある保育方針のもと保育を行いたいなら私立保育士

私立保育園の特徴は、その保育方針に現れます。

自分が興味ある保育方針の園に就職することで、学びを深め、経験を積み、その道のスペシャリストとして活躍することも可能です。

勤務先保育園が民営化されたら?

公立保育園が民営化されるケースも、最近ではよくあります。

そのような場合、保育士はどうなるのでしょうか。


民営化された場合、公務員保育士がその保育園にそのまま務めることは基本的にありません。

他の公立保育園へと異動した場合、異動先となる公立保育園がない場合は他の業務に従事する形で対応することになります。


ただ、近年公立保育園が少なくなってきているというのは、確かな事実です。

移動先の保育園が見つからず、他の業務に従事することになった場合は、保育士の仕事を継続することはできません。

どうしても保育士として働き続けたい場合は、私立保育園への転職を検討することも考えましょう。

自分のライフプランに合わせた、ベストな働き方を選ぼう

公務員保育士、私立保育士、それぞれの特徴やメリット・デメリットを見てきました。

自分が何に重きを置いて生活していきたいかをよく考えて、ライフスタイルに合わせた働き方を選ぶことが、保育士として長く活躍する為には重要です。


公務員保育士になる為には、難関である地方公務員試験に合格することが必要ですから、公務員保育士を目指すなら計画的に勉強に取り組みましょう。

私立保育士を目指す場合は、園の方針や教育理念をよく理解し、自分が挑戦してみたいと思える園を探しましょう。

この記事を書いた人
えんみっけ!事務局長 Y.T
「えんみっけ!」の開発・運営の責任者(園児の子どもを持つパパ)です。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。

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