キャリアアップ研修で専門性も給与もアップ!保育士として活躍し続けよう

2022.03.23 | 給料・環境 | 資格・試験
今までの保育業界におけるキャリアパスは「一般保育士」「主任保育士」「園長」という流れが主流となっており、一般保育士から主任保育士になるためには、特別な資格は必要ないものの経験年数を重ねる必要があります。
そのため、保育士としてキャリアを重ねるのは大変なイメージが強く存在していたのです。
また、保育士は結婚や出産などを経ても、パートや派遣などさまざまな働き方がしやすい仕事ではあるのですが、一度離職してしまうと王道のキャリアに戻るのは難しい面もあり、正職員としての職場復帰を迷う人も多い傾向にありました。

この課題をクリアにするために、新たに設定されたのが保育士キャリアアップ研修です。

1.保育士のキャリアアップ研修とは

1.1.概要

保育士キャリアアップ研修は、2015年にスタートした「処遇改善等加算」の「Ⅱ」に該当する、初任から中堅の保育士を対象とした制度です。

キャリアアップ研修を修了することと、一定の条件を満たすことで、新たに設置された3つの役職に就くことができるようになりました。

1.2.新たに追加された役職

新しく追加された役職は、以下の3つです。


・職務分野別リーダー

・専門リーダー

・副主任保育士

2.保育士処遇改善等加算について

2.1.概要

キャリアアップ研修は、2015年に新設された保育士処遇改善等加算の一環としてスタートした研修制度です。保育士処遇改善等加算には「処遇改善等加算Ⅰ」と「処遇改善等加算Ⅱ」の二種類があります。

保育士処遇改善等加算Ⅰ

2015年にスタートした制度で、保育士の役職には関係なく平均勤続年数に応じる形で賃金が加算される制度です。

保育士処遇改善等加算Ⅱ

保育士が一定の条件を満たし、定められたキャリアアップ研修を受講することで、処遇改善等手当が受けられる2017年にスタートした制度です。

2.2.従来の保育士の役職について

これまで、保育士の役職は「クラス担任」「クラス業務責任者」「主任保育士」「園長」の4段階とされていました。

役職

仕事内容と役職につくための条件など

クラス担任

クラスを受け持つのが、クラス担任の仕事です。保育士になれば、誰でも任されるようになる仕事となっており、一人担任の場合と複数担任の場合があります。

クラス担任になるために、特別必要な資格や、必須となる勤続年数などに定めはありません。

クラス業務責任者

保育園の場合、複数の保育士が担任となるケースがあります。そのような場合、クラス業務責任者(クラスリーダー)が存在します。

クラス業務責任者になるために、特別必要な資格や、必須となる勤続年数などに定めはありません。

主任保育士

クラス担任ではなくフリーの保育士として、保育園全体について見守る仕事です。

主任保育士になるために必要な資格はありませんが、目安としては20年ほどの勤続年数が必要とされています。

園長

保育園の園長は、園長先生であると同時に経営者であることが求められます。園長の仕事は大変幅広く、保育園に関わる子どもたちや保護者、保育士すべてに安心して日々過ごせるよう環境を整える能力も必要です。

園長になるためには、特別資格は必要ありません。ただ、保育の知識や経験は必要となりますから、目安としては、25年ほどの勤続年数が必要となります。

参考・出典:

全国保育協議会会員の実態調査報告書2016

内閣府「施設型給付費等に係る処遇改善等加算及び処遇改善等加算Ⅱについて」

2.3.2017年に新たに追加された役職について

これまで、保育士のキャリアアップは、以下のような4段階が一般的でした。


1)クラス担任

2)クラス業務責任者

3)主任保育士

4)園長


ここに新役職を設置することで、若手・中堅保育士のキャリアパスを描きやすくし、さらには給与アップにもつなげようと、キャリアアップ研修が実施されるようになりました。

新たな役職を含めると、保育士のキャリアパスは7段階となります。


1)クラス担任

2)クラス業務責任者

3)職務分野別リーダー(新役職)

4)専任リーダー(新役職)

5)副主任保育士(新役職)

6)主任保育士

7)園長


役職を細分化することで一つのステップが短くなり、キャリアアップまでの道のりや、取り組むべきことが可視化しやすくなりました。

2.4.新役職配置の背景や目的について

職務や職責に応じた処遇改善

保育士の仕事は責任が大きく、業務量が多いにも関わらず、それに対して賃金が低いとされてきました。

また、これまでは一般保育士の次なるステップは主任保育士とされており、そこに辿り着くまでの平均年数はおよそ20年とされていました。

そのため、結婚や出産といったライフイベントを挟みながらキャリアを重ねるのが難しい点が問題視されてきたのです。


参考:全国保育協議会会員の実態調査報告書2016


これらをクリアにするために設置されたのが、新役職です。

段階的に給与とポジションをアップすることで、若手・中堅保育士のモチベ―ションを維持し、より専門性の高い知識やスキルを習得する効果が期待されています。

保育の専門知識向上

保育の現場では食育やアレルギー問題、発達プロセスや障害児保育など、さまざまな知識が必要です。新役職に就くためには、専門知識を深めるためにキャリアアップ研修として用意された6分野のなかから、決められた数の研修を修了することが条件とされています。

3.キャリアアップ研修を受講するために必要な資格

3.1.キャリアアップ研修の受講対象者

キャリアアップ研修の対象となる保育士は、新卒から中堅まで幅広く設定されています。

新卒のうちから、保育士としてステップアップできる環境が用意されているのは、嬉しいですよね。


ただし、キャリアアップ研修を受講するためには、条件があります。

3.2.新役職を目指すための条件

新役職と、キャリアアップ研修を受講するための条件をみていきましょう。


【職務分野別リーダー】

一般保育士、つまり新卒で入社した保育士が最初に挑戦するステップとなるのが「職務分野別リーダー」です。

職務分野別リーダーになるための条件は以下の通りとなっています。


・実務経験3年以上であること

・専門分野別研修の6分野のうち、担当する専門分野別研修が終了していること

・修了した研修分野に関係する職務分野別リーダーとして保育園から発令されていること


【専任リーダー】

職務分野別リーダーの次のステップとなるのは「専任リーダー」です。

専任リーダーになるために必要とされる条件は以下の通りです。


・実務経験年数7年以上であること

・職務分野別リーダーを経験していること
・専門分野別研修6分野のうち3分野以上を受講していること

・専門リーダーとして保育園から発令されていること


【副主任保育士】

専任リーダーの次のステップは「副主任保育士」です。

今後、主任や園長といった保育園の運営を担うポジションへのキャリアアップを視野に入れるステップとして、マネジメント研修受講が必須となっています。

副主任保育士になるための条件は以下の通りです。


・実務経験7年以上であること
・職務分野別リーダーを経験していること
・専門分野別研修6分野のうち、4分野以上研修を修了していること
・マネジメント研修を修了していること

・副主任保育士として保育園から発令されていること

4.キャリアアップ研修について

キャリアアップ研修は都道府県単位で実施され、1つの研修につき15時間ほどです。研修受講後には、研修内容を正しく理解できているかを確認するためにレポートを提出し、受理されると修了証が発行されます。


修了証は都道府県限定のものではなく日本全国で認められるものです。

引越しをしたり、転職したりしても有効なため、保育士の仕事を続けていきたい方は、キャリアアップ研修を受けておくといいでしょう。


現在勤めている園の志望する役職が既に上限人数に達している場合、その役職には就けないケースもあります。しかし、結婚や出産、介護など、様々な事情で保育の現場から離れたとしても「キャリアアップ研修を修了している」実績は残り、再就職時には強みとなります。

4.1.キャリアアップ研修概要

保育士のキャリアアップ研修は、以下の8つの研修が用意されています。


【専門分野別研修】

保育の現場において、各専門分野のリーダー的な役割を担える人材育成を目的とした研修です。

乳児保育

0歳〜3歳未満を対象とした保育に関する研修で、乳児保育の意義や、乳児の発達に応じた保育内容、適切な関わり方などについて学びます。

幼児保育

幼児保育では、3歳児以上を対象とした保育について学びます。幼児教育の意義、それぞれの発達に適した保育や記録、評価、そして小学校教育へのスムーズな接続についてなどを学びます。

障害児保育

障害時保育では、障害への理解や障害児の発達援助について、障害児保育の環境、障害児保育の指導計画の立て方や記録・評価について学びます。

食育・アレルギー対応

食品・アレルギー対応では、栄養についてや食育計画作成とその活用方法、アレルギー疾患について、保育所における食事提供ガイドラインやアレルギー対応ガイドラインについて学びます。

アレルギーに関する理解を深め、子どもたちへの対応を学び、また、ほかの保育士やスタッフに対して助言や指導を行えるようになることを目的としています。

保健衛生・安全対策

保険衛生・安全対策研修分野の研修は保健衛生への理解を深め、保険計画作成と実施方法について学びます。また、安全対策への理解を深め、子どもたちを守る対策を取る能力の身につけ、保健衛生や安全対策の知識をほかの保育士に対して指導し、保育園全体で子どもたちを守る能力を高めることを目的としています。

保護者支援・子育て支援

保護者に対しての相談援助や、地域での子育て支援、虐待の予防、関係機関各所との連携などを行います。その知識を活かし、ほかの保育士にも指導を行います。


【マネジメント研修】

保育現場において各分野のリーダー経験があり、主任保育士のもとでミドルリーダー的役割を担う人材育成を目的としています。

マネジメント研修

マネジメント研修は、主任保育士をサポートするサブリーダーとして必要となる知識獲得を目指します。マネジメントへの理解を深め、組織目標設定や人材育成、働きやすい環境づくりなどを学び、円滑な園運営や保育の質向上につながる実践的なマネジメントを学びます。


【保育実践研修】

保育経験が少ない人、しばらく保育の現場から離れていた人などの現場復帰をサポートする研修です。

※保育実践研修は、保育士のキャリアアップ研修のひとつですが、新設された役職になるためのものではなく、潜在保育士の現場復帰サポートを目的とした研修です。

保育実践

保育実践は、保育現場経験の少ない人や、ブランクがある潜在保育士を対象とした研修です。子どもとのかかわり方や言葉や音楽を使った遊び、身体を使った遊びなどについて学びます。子どもに対する理解をより深め、主体的に動ける保育士を目指します。


参考:内閣府「施設型給付費等に係る処遇改善等加算及び処遇改善等加算Ⅱについて」

5.キャリアアップ研修受講後の処遇改善内容

キャリアアップ研修を受講すると、処遇改善等加算Ⅱが受けられるようになります。


処遇改善等加算Ⅱは市区町村から保育園が支払いを受ける施設型給付のものです。

つまり、保育園に対して支払われるため、実際に保育士に支給される金額は園の職員数などによって変動するということを理解しておきましょう。

5.1.職務分野別リーダー

職務分野別リーダーには、月額5,000円の手当が支払われます。


職務分野別リーダーは、1つの施設につき園長と主任保育士を除いた全職員数(給食調理員や事務員も含む)の5分の1が上限です。


例えば、全職員数が25名の場合は職務分野別リーダーの上限人数は5名とされ、上限人数いっぱいまで職務分野別リーダーが在籍している場合、その園には5,000×5=25,000円の手当が支給されます。

5.2.専門リーダー

専門リーダーには、月額最大40,000円の手当が支払われます。


専門リーダーは、1つの施設につき園長と主任保育士を除いた全職員数(給食調理員や事務員も含む)の3分の1が上限です。


全職員数が18名の場合は専門リーダーの上限人数は6名とされ、上限人数いっぱいまで専門リーダーが在籍している場合、その園には40,000×6=上限240,000円の手当が支給されます。

5.3. 副主任保育士

副主任保育士には、月額最大40,000円の手当が支払われます。


副主任保育士は、1つの施設につき園長と主任保育士を除いた全職員数(給食調理員や事務員も含む)の3分の1が上限です。


全職員数が30名の場合は副主任保育士の上限人数は10名とされ、上限いっぱいまで副主任保育士が在籍している場合、その園には40,000×10=上限400,000円の手当が支給されます。

6.一生モノの強みを身につけよう!キャリアアップ研修で保育士としてステップアップ

保育士のキャリアアップ研修を修了しておくことは、保育士として生きていく上で大きな強みとなります。キャリアパスも描きやすくなりますし、一度保育の現場から離れたとしても、復職の際に大変役立ちます。


専門性の高い知識を持つ保育士として活躍し続けられるよう、キャリアアップ研修を上手に活用していきましょう。

この記事を書いた人
えんみっけ!事務局長 Y.T
「えんみっけ!」の開発・運営の責任者(園児の子どもを持つパパ)です。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。

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