公務員保育士の採用試験の流れや対策、注意点まとめ|公務員保育士になるには?
公立の保育園や、自治体にある児童福祉施設に勤務する保育士は公務員保育士と呼ばれ、地方公務員の一員となります。
公務員保育士は、保育士のでも恵まれた条件で働くことができるとされています。
具体的に、私立保育園で働く保育士と、公務員保育士ではどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
公務員保育士とは?
公務員保育士とは国や都道府県・市町村といった自治体が運営する公立の園に勤務する保育士を指します。
公務員保育士は、役所の職員さんや学校の教師と同様に「公務員」です。
公務員は、収入が安定していることや、福利厚生が充実していることから就職を希望する方が多いですが、保育士も同様で、公務員保育士人気は年々高まっています。
ただ、私立保育士になるのと、公務員保育士になるのでは、採用までの流れが大きく異なりますから、まずはそのプロセスを理解しておきましょう。
公務員保育士になる為には、前提条件として
・保育士資格を保有していること
・次年度の4月までに保育士資格取得見込みがあること
いずれかの条件を満たすことが必要となります。
公務員保育士になるには?採用までの流れ
では、具体的な流れを見ていきましょう。
2.1.地方自治体の保育士採用試験に申し込む
公務員保育士の試験は、自治体によって異なります。
一般的には、毎年6月~9月頃まで自治体ごとに試験を行うのが主流となっていますが、3月~4月に実施されるケースもあります。志望する園があるエリアの情報はしっかりとチェックしましょう。
平成29年度の試験結果一覧によると、倍率は1.5倍~15.2倍までと、自治体によって様々です。倍率が低くても、公務員保育士は数人に1人しか採用されない狭き門ということが分かります。
また、自治体によっては応募可能年齢が設定され、居住制限が定められているケースもありますから、公務員保育士を目指したい場合は区役所や市役所などの応募受付窓口に予め確認しておくと安心です。
離職率が大変低い為、中々欠員募集がないというのも公務員保育士の特徴で、公務員保育士の採用試験は、欠員が出た年にしか実施されません。
その為、毎年募集があるとは限らないので、公務員保育士を目指す人はしっかりと情報をチェックしましょう。
また、幼保一元化が進み、保育士資格だけでなく幼稚園教諭第一種(第二種)の両方が求められるケースも増えていますので、応募する際には募集要項をしっかりと確認してください。
参考:上野法律セミナー「平成30年度公務員試験結果一覧(保育)」
2.2.一次試験に合格する
公務員保育士試験の一次試験は
・教養試験
・専門試験
が実施されます。
教養試験
公務員保育士の教養試験では、高校卒業程度の一般教養知識を確認する内容が出題されます。
・国語、数学、英語、理科、社会の5科目
・現代文、物理、化学、政治・経済など
自治体によって出題傾向が違いますから、事前に確認し、対策を採っておきましょう。
作文が実施される自治体もあります。
専門試験
専門試験では、保育士養成学校で学習する専門分野に関する内容が出題されます。
こちらに関しては、基本的に通常の保育士試験と同様の内容と考えて良いでしょう。
以下のいずれかの分野から出題されるのが一般的です。
・社会福祉
・子ども家庭福祉
・子どもの保険
・保育内容
・保育原理
・保育心理学
・障害児保育
など
2.3.二次試験に合格する
一次試験を合格すると、二次試験が実施されます。
二次試験は、自治体によって内容が大きく異なる傾向にある為、自分が志望する自治体の試験内容をしっかりと把握しておくことが合格への近道です。
一般的には面接と実技試験が実施されますが、その他にも適性検査や小論文、体力測定などが行われるケースがあります。
実技試験
保育園業務に必要となる「音楽」「言語」「造形」の能力や適性を確認する試験です。
ピアノ演奏や絵本の読み聞かせ、手遊びなどの実技試験が行われます。
実技試験課題については事前に内容が指定される場合と、受験者が自分で選ぶ場合があります。
面接
子どもや保護者とのコミュニケーションが非常に重要な仕事である公務員保育士の試験では、面接試験が大変重要視される傾向にあります。
面接形式は「個別面接」「集団面接」「集団討論」など、自治体によって様々です。
質問内容は自治体によって違いますが、以下の点についてはよく聞かれる内容となります。予め用意をしておきましょう。
・志望動機
・自己PR
・ロールプレイング
・仕事観や熱意
また、面接では回答内容だけでなく、態度も重視されます。
保育士として仕事をしていく上で、明るく、ハキハキと回答し、相手に信頼感を与えることも重要であることを理解した上で、面接に応えられるよう準備をしておきましょう。
2.4.保育施設からの連絡を待つ
市区町村といった自治体ごとに実施される公務員保育士の採用試験に合格すると、自治体の採用候補者名簿に1年間名前が掲載されます。
その後は採用を希望する保育園からの連絡を待ち、保育施設から採用連絡が来て初めて晴れて採用となります。
採用試験合格が採用確定ではないということを、理解しておきましょう。
その後、配属先となる保育園や施設が決まると連絡が来て、公務員保育士として勤務がスタートします。
公務員保育士の試験対策は?
公務員保育士を目指す場合、どのような試験対策が必要なのでしょうか。
3.1.一次試験:過去問で出題傾向をつかむ
一次試験に関しては、過去問を活用して出題傾向を把握することが重要です。
教養試験
中学から高校まで勉強した内容が出題される教養試験は、試験範囲が広範囲にわたります。
その為、どこにポイントを置いて勉強すべきかが、合格を左右するといえるでしょう。
効果的に学習を進める為には、自治体の過去問を活用し、出題傾向を理解してポイントを絞って勉強を進めるようにしてください。
専門試験
専門試験は、基本的に保育原理といった一般の保育士試験と同じ分野からの出題となります。
ただ、自治体によって内容が異なりますから、過去問には必ず目を通しておくようにしてください。
小論文
自治体によっては、小論文が課されるところもあります。
保育、人物、知識などをテーマに、原稿用紙2~3枚程度の出題となりますから、こちらも過去問をチェックしておきましょう。
3.2.二次試験:保育士資格試験の復習・過去問のチェック
公務員保育士の一次試験に合格すると、二次試験を受験することができます。
二次試験は、簡単な実技試験と面接というのが一般的で、この二次試験が最終選考となる自治体や、二次試験合格者を対象に三次試験として面接を実施するケースもあります。
自治体によって試験内容は異なりますから、正確な試験情報を志望する自治体のホームページで確認し、職員採用試験の受験案内を請求するなどして、確認しておきましょう。
3.3.面接:回答を用意しておく
保育士という仕事は、子どもたちは勿論、その保護者や保育士同士の関係性を構築することも重要なスキルとして求められます。
近年の公務員保育士試験では、筆記試験では合格者が増加傾向にあるものの、その後の面接で篩をかけるケースが増えており、このことからも面接が重要視されていることが分かります。
面接対策は必須と考えて、準備を整えておくことが大切です。
特に、頻出となる質問に関しては、あらかじめ回答を用意しておきましょう。
面接で質問される内容は、採用する側から見た時に大切にしたいポイントとなっています。
それを考えた上で、どのように答えるかを考えておきます。
「志望動機」
志望動機は「本気でこの地域で、保育士として仕事をしたいか」という熱量を判断する為に問われます。
その為、いわゆる保育士試験で回答するような抽象的なものではなく、志望する自治体の保育政策方針や、保育所の保育方針、特徴などを調べ、具体的に答えられるように準備しておくことが大切です。
志望する自治体だから出来る「ここでしたいこと」「この保育園で取り組みたいこと」を明確にすると、面接官に説得力を感じさせることが出来ます。
「保育士という仕事に対する職業観について」
保育士の職業観を確認する質問として「保育士の仕事で、大切だと考えることは何ですか」「どんな保育士になりたいですか」「あなたにとって、保育士の仕事とは何ですか」といったものがあります。
この様な質問に対して柔軟に回答する為には「どんな保育士を目指すのか」「自分にとって保育士の仕事とは」という点を掘り下げて考えておく必要があります。
具体的には目標や目的を掲げ、どうしてその様に考えたのか、そういった考えを持つきっかけとなった経験などを書き出していきましょう。
その上で、今後どうしたいのか、その為にどのような行動を起こしていくか、考えを深めていくことが大切です。
最初は少し大変かもしれませんが、自分の中に明確な理由を見つけることが出来ればそれが軸となり、様々な質問に対応しやすくなります。
ぜひ、しっかりと取り組んでください。
自己PR
公務員保育士試験で「自己PRをしてください」と直接的に質問されるケースはあまりありません。
ただ、どの質問に対しても最終的に自己PRに繋げられるように回答することが可能です。
どのような質問も、最終的に自分が強みとなる部分を伝えられるように答えられるように、自分の強みやアピールしたい部分を掘り下げて考えておきましょう。
実技に関する質問
「このような場面では、どのような対応をしますか?」といった実技に関する質問も、頻出とされています。
フラットな立場で対応することが重要ですから、感情的にならず、状況を分析し、冷静に対応出来ることを面接官に伝えましょう。
3.4.面接:笑顔で受け答えする練習
面接は、笑顔で受け答えすることが大切です。
保育士の仕事は相手に安心感を与えることが重要ですから、内心慌てたり、焦ったりしていても笑顔で対応する姿勢が求められます。
また、緊張すると早口になる傾向がある人も多いので、出来るだけゆっくりと話すことを心掛けましょう。
3.5.小論文:過去問をもとに練習
小論文が課される自治体では、事前に練習をしておくことが必要です。
最低限押さえておきたいポイントとして、次のようなものがあります。
・テーマに沿って、最終的に持っていきたい結論をまず決める
・体験談など、具体的なエピソードを織り込む
・文字の割り振りを決める
まず、結論を述べ、具体的なエピソードを入れながら書き進めることで、説得力のある小論文を書くことができます。
注意したいのが文字の割り振りで、一般的に800文字の小論文を書くという時には、導入部分である序論と、まとめとなる結論は150文字程度、本論を500文字程度と設定し、納めるようにします。
導入やまとめの部分が長すぎると、メインとなる本論の部分の内容が薄くなってしまうので、注意が必要です。
小論文は、決められた文字数でまとめることが大切です。
課題の文字数の80パーセントは必ず埋めるようにしましょう。
また、長く書きすぎるのもマイナスとなりますから、指定文字数内に納めるように書き進めてください。
公務員保育士になる際の注意点
公務員保育士を目指す際に、注意しておきたいポイントを見ていきましょう。
4.1.採用が確定しなければ翌年も試験を受ける必要がある
公務員保育士に合格し、採用候補者名簿に1年間登載されます。
採用候補者名簿に登載されても、園からの採用が確定しない場合は、その次の年の公務員保育士採用試験を再び受験して合格する必要があります。
4.2.保育士採用試験に年齢制限を設けている自治体が多い
公務員保育士試験では、受験資格として年齢制限を設けている自治体が多くあります。
「20歳以上35歳まで」と定められているケースが多いので、自分が志望するエリアの公務員保育士採用試験の年齢制限を忘れずに確認しましょう。
自治体によっては、40歳以上でも受験出来るところもありますから、まずは正しい情報収集から始めてください。
4.3.年度によっては採用試験がない自治体もある
公務員保育士は離職率が大変低い為、欠員が中々出ず、年度によっては採用試験自体行わない自治体もあります。
自分が志望する自治体が採用試験実施予定か、確認しておきましょう。
4.4.採用後は異動の可能性がある
公務員保育士の場合、3~4年ほどで自治体内の保育園を異動するのが一般的です。
数年に一度異動があるということを、受験前に理解しておきましょう。
公務員保育士は合格・採用されれば長く活躍できる難関資格
公務員保育士は難関資格ですが、一度公務員保育士になれば働きやすい待遇や環境が約束される面があるのも事実です。
どうしても公務員保育士になりたい場合は、倍率が低いエリアに引っ越しをして試験に挑むのも、1つの選択肢といえるでしょう。
保育士として長く仕事を続けたい場合は、公務員保育士採用試験も検討してみることをお勧めします。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。
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