【保育学生さん向け】就活前に確認しておきたい給料の仕組み
保育士として就職することが現実味を帯びると、気になるのが「どのくらいの給料がもらえるか」ということではないでしょうか。
保育士に限らず、給料にはさまざまな形態があり、実はなかなか複雑です。
就職してから給料明細を見て「これって何?」と疑問に感じることがないように、就職活動前にぜひ各項目を確認しておきましょう。
保育士の平均給料は?
最初に保育士の平均給料についてみていきましょう。
厚生労働省が令和元年に行った「賃金構造基本統計調査」によると、全国の保育士の平均給料は、約24万円となっています。
「意外と高い?」と感じる方がいるかもしれませんが、この平均額は手取り額ではなく、この金額から所得税や社会保険料などが引かれる形になります。そのため、手取り額はおよそ18万円~19万円程度でしょう。
実際、保育士の給料は他の職業に比べて低い傾向があります。しかし、近年徐々に平均額は向上しており、今後もそれは続くことが予想されます。
基本給=給料ではない!
求人情報を見ていると、「基本給」という言葉をよく目にすると思います。
この「基本給」を「給料」と捉える人が多いようですが、実はそうではありません。
基本給とは、学歴や年齢、実務経験、能力などに応じて算定された給料のことを指します。
園から受け取る賃金において、根本的な部分と考えましょう。
ただ、実際に勤務して支払われる給料には、基本給にオプション的な手当などを付与した合計の金額であるケースが多くなります。
これが「月給」と呼ばれるものです。
園によっては「基本給のみで手当はない」というケースもあり得るので、求人票をよく確認し、給与体系がどうなっているのかを確認しておきましょう。
基本給の種類
続いて、基本給の種類について見ていきます。
基本給には、3つの種類があり、性質もそれぞれ異なります。
■仕事給型
基本給の中でも仕事給型と呼ばれるものは、仕事内容や職務遂行能力、成果や業績によって基本給が決定されるタイプのものです。
仕事給の場合、勤続年数や年齢、学歴で給料が決まるのではなく、仕事、つまり働きぶりで基本給を決定します。
労働に対する対価として、賃金を支給するタイプと考えましょう。
■属人給型
属人給型の場合、年齢や勤続年数、学歴をベースに基本給を決定します。
仕事給型とは真逆の制度で、仕事内容や成果、職務遂行能力などで給料が左右されることはありません。
年功序列に基づいた賃金体系で、社員本人の持つ学歴や経歴で決まるため、本人給や継続給と呼ばれることもあります。
属人給型は、生活に必要な金額を年齢に紐づけて考慮する意味合いもある給与体系なので、生活保障となる一面も持っています。
■総合給型
仕事給型と属人給型を合わせたものが、「総合給型」という基本給です。
本人の仕事に対する貢献度と、年齢や勤続年数、学歴などを合わせて考慮したうえ、基本給が決定します。
基本給以外の支給項目
保育士の給料には、基本給以外にどのような支給項目があるのでしょうか。
■手当
手当には、労働基準法で定められていて支給義務がある手当と、基本給以外に支給される手当があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
・支給が義務付けられている手当
労働基準法で支給が義務付けられている手当には、次のようなものがあります。
【時間外手当】
1日の労働時間は8時間、1週間では40時間と法で定められています。この法定労働時間を超過した場合、その時間に応じて支払われるのが時間外手当です。
時間外手当の金額は、基本給を時給換算した額の125パーセント以上と義務付けられています。
例えば、時給2,000円だとしたら、「2,000×1.25=2,500」となり、2,500円が時間外出勤手当を含む時給として支払われます。
【休日出勤手当】
休日出勤手当は、保育園が法定休日とする日に出勤した場合に、支払われる手当です。
休日出勤手当は、時間外出勤手当と同様に基本給を時給換算し、その額の135パーセント以上とすることが定められています。
例えば、時給2,000円の場合には、「2,000×1.35=2,700」となり、2,700円が休日出勤手当を含む時給として支払われる形になります。
【深夜労働手当】
深夜労働手当は、深夜とされている午後10時以降から翌朝午前5時までの間に勤務した場合、時間外手当や休日出勤手当に上乗せした基本給を時給換算し、その25パーセント以上が支払われるものです。
つまり、時給2,000円の保育士が休日の深夜に勤務した場合、まずは休日出勤手当の計算は次のようになります。
まず「2,000×1.25=2500」で、これにさらにプラスして25パーセント上乗せした金額は、「2,500×1.25=3,125」となり、この3,125円が深夜手当を含む時給として支払われることになります。
・仕事給的手当
続いて、仕事給的手当についてみていきましょう。仕事給的手当には、次のようなものが含まれます。
【職務に関する手当(役職手当など)】
職務に関する手当の例として分かりやすいものは、役職手当といえるでしょう。
役職についている人を対象に、仕事内容や責任の重さに応じて支払われるのが役職手当です。
ちなみに、役職手当が支払われる場合は、法律上残業手当は支払わなくてもよいと定められています。
【能力に関する手当(資格手当・技能手当など)】
能力や技能によって支払われる手当の代表的なものとしては、資格手当が挙げられます。
その名の通り、資格を保有している人に対して支払われる手当です。
【成果に関する手当(歩合給手当など)】
成果に関する手当とは、仕事の成果に対して支払われる手当です。
営業系の企業などにおける歩合給などが代表格で、社員のモチベーションアップにつながる手当といえるでしょう。
【勤怠に関する手当(皆勤手当など)】
無遅刻無欠勤だった場合に支払われる皆勤手当や、企業が定めている基準をクリアした場合に支払われる精勤手当が、勤怠に関する手当の代表格といえるでしょう。
これらの手当は、有給休暇を取得している場合も受け取ることが可能です。
・生活給的手当
続いて、生活給的手当についてです。
生活給的手当とは、生活を保障する意味合いで支給される手当で、具体的には次のようなものが含まれます。
【私生活に関する手当(住宅手当・家族手当など)】
一般的な福利厚生として、扶養している家族に支払われる家族手当や、従業員の住宅を補助する住宅手当は私生活に関する手当として支払われるものの一つです。
【転勤に関する手当(単身赴任手当・地域手当など)】
生活給的手当は、社員側の生活保障的な意味合いを持つのが一般的ですが、転勤に関する手当については企業側の都合に応じて支払われるのが基本です。
企業の都合で単身赴任する場合は単身赴任手当、都市部など物価が高い地域に引っ越しをする場合は地域手当などが支払われます。
保育士にはあまり関係がない手当ですが、常識として知っておきましょう。
■賞与
賞与はいわゆるボーナスのことで、従業員に対して給料とは別に支払われる特別な給料です。
ただ、賞与は園によって設定があるケースもあれば、ないケースもあります。
仕事を始めてから「賞与がなかった」とモチベーションが落ちてしまわないように、賞与以外のことでも、給料に関して分からないことがある場合は、園に質問して解消しておくようにしましょう。給料から差し引かれる控除項目は?
給料明細には、給料から差し引かれる「控除」という項目があります。
控除項目には、どのようなものがあるのでしょうか。
■社会保険料
健康保険組合に納めている健康保険料や厚生年金保険料などが、社会保険料という項目です。
社会保険料には、次の4つの保険料が含まれています。
【健康保険料】
健康保険は、けがや病気で医療機関にかかった時に、医療費の負担を軽減する保険です。
【介護保険料】
介護保険は40歳から64歳の従業員が納める保険料で、介護が必要になった時に、介護サービスを受けることができる保険です。
新卒で就職した場合はすぐには関係しない保険料ですが、いずれ支払うことになるということを知っておきましょう。
【厚生年金保険料】
厚生年金保険とは、定年退職後の公的年金を受給するための保険です。
基礎部分である国民年金部分の上乗せ部分ですが、基礎部分と合わせて「厚生年金保険料」と呼ばれています。
【雇用保険料】
雇用保険とは、従業員が失業した際に転職するまでの生活資金を受け取る失業保険や、ハローワークで仕事探しの支援を受けるための保険です。
■税金
続いて、税金についてみていきましょう。給料から差し引かれる税金には、次の2つがあります。
【所得税】
所得税は、所得額に応じて国に納める税金のことを指します。
所得税の金額は、年末調整や確定申告で決まりますが、企業に勤めている場合は月々の給料をベースに会社がおおよその税額を算出し、毎月の給料から天引きして納税しているので、個別での手続きは不要です。
本来納税するべき額に過不足が生じた場合は、12月に実施される年末調整で調整されます。
年末調整も企業が行ってくれるので、個人での対応は必要ありません。
【住民税】
毎年1月1日に住民票がある住所地の市区町村に納税するのが住民税です。
所得税同様、月々の給料から天引きされて納税するのが一般的となっています。
住民税の額は、前年の1月1日から12月31日までの給料をもとに決まるので、前年に収入がない場合は、今年の住民税は徴収されません。
新卒で就職し、前年収入がない場合は、今年は徴収されないということです。
就活を控える保育学生が注意すべきこと
続いて、就職活動をする時に注意しておきたい給料に関するポイントを確認しておきましょう。
■基本給は高いほうが安心
基本給と、基本給プラス諸手当の合計金額で考えた時には、基本的に基本給が高いほうが安心度も高いと考えておきましょう。
基本給が安くても、諸手当が充実していて、合計金額が高ければそちらのほうがいいのでは?と思うかもしれませんが、諸手当は働き方などによって減額されたり、場合によっては消失することも考えられます。
法律で労働条件の不利益変更は原則として禁止されているので、基本給は上がっていくことはあっても、下がることはあまりないと考えていいでしょう。
このことから、基本給は高いほうが安定した生活を手に入れられる傾向にあるといえます。
基本給だけで就職先の園を選ぶ必要はありませんが、例えば複数内定をもらった時に、判断材料の一つとして考えてみてください。
■給料だけに注目しない
求人票をチェックする時に「お給料はいくらかな?」とチェックしてしまう学生も多いと思います。
お金は、もちろん生活の基盤となるのでとても大切なポイントです。
しかし実際に仕事を始めた時に「こんなはずじゃなかったのに」と、勤務条件で後悔するようなことになっては大変です。
給料以上に労働時間や、残業の有無、休日出勤の有無などはしっかりとチェックし、無理なく勤務できる環境かどうかを確認しておきましょう。
そのためには、実際に勤務した時に自分がどのような条件を譲れないのかを、あらかじめ考えておく必要があります。
また、求人票の見方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
【保育士求人票の見方】失敗しない就活のために確認しておきたいポイントとは?
■コロナ禍への対応を確認する
新型コロナウイルス感染症の影響により、今後も休園などが必要となる可能性はゼロではありません。
万が一、休園になった場合の保育士の休業補償などについても、あらかじめ確認しておきましょう。
「採用される前に給料のことを確認するのは、、、」と躊躇する学生さんもいるかもしれませんが、これから長く勤めたいと考えているからこそ、確認しておきたい事項です。
遠慮せずに、聞きたいことはきちんと確認するようにしてくださいね。まとめ
就職すると、一人の社会人としての生活が始まります。
就職活動は、そのための準備期間です。
給料や税金、保険のことなど、社会人として知っておきたい知識を身に付けて、就職活動に挑んでください。
一見、保育士の仕事とは関係ない内容に感じるかもしれませんが、どの項目も生活をしていくうえで重要なことばかりです。
給料や社会の仕組みを知れば、これからの人生で選択が必要となる場面や想定されるリスクに備えていくこともできます。
保育士としてだけでなく、一人の社会人として正しい知識を身に付けていきましょう。
保育に関わる方たちとの交流を通じて、役に立つ情報を発信していきます。
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